気になる事例

灰皿が極端に小さい理由

「〜しなさい!」「〜するのはやめなさい!」

いい過ぎるのはダメだと思いつつ、小学生になった息子に何度も何度も、毎日のように浴びせる言葉。子どもに否定的な言葉を使うと、心が萎縮してしまって、本当の事を言わなくなるとか。頭ではわかってはいるけど、何度言っても聞かないと、ついつい口が出てしまいます。

言葉の力は偉大ですね。

そんな悩み多き毎日ですが、今回のテーマは子どもの教育論ではなく「言葉で伝えても、人はそのとおりには行動しない」ということ。

改めて文字にすると当たり前だと思ったりしますが、世の中には「言えばそのとおりに行動してくれる」で溢れかえっています。

例えば、業務マニュアル。マニュアル通りに業務を進めるのが当たり前で、違ったことをすると「ちゃんとマニュアル通りに!」と怒られます。また業務を遂行する人が変われば、またマニュアルを一から理解しなければなりません。

例えば、社員教育。社員研修という名目で先輩方が講演形式で教育するのが基本スタイルですが、言葉で伝えることが多く、研修が終わればすぐに仕事ができるようになるということでもありません。また新入社員が入社するたびに、都度研修が必要になります。

冒頭で書いた子どもについてもそうですが、言葉だけで人の行動をコントロールするのはどうしても無理があるのです。

ある高級クラブの灰皿は極端に小さいそうです。数本のタバコを吸えばすぐにいっぱいになってしまって、新しいものに交換しなければならない。その理由は、スタッフがこまめに新しい灰皿に交換してくれることでのきめ細やかな対応の演出と、スタッフ自身が常にお客さんへの注意を自然と払うようになる、ということです。「客の灰皿がいっぱいじゃないか!もっと気を配れ!」と、注意し続ければ解決する問題かもしれませんが、それは「注意された人」が変われば、また同じことを繰り返す必要があるのです。

言葉で人の行動をコントロールすることは難しい。言葉に「仕組み」を導入して行動をコントロールすることのほうが、より効果的になるのでないでしょうか。言葉だけで伝えるのではなく、言葉も仕組み化して伝える。

高級クラブの灰皿を極端に小さくすることは秀逸なデザインだと思います。

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