気になる事例

田んぼや畑にコスモスを植える理由

田んぼ一面に、コスモスやレンゲソウが植えられている光景を目にしたことはないでしょうか。先日、徳島の実家に帰省した際に、ちょうど田んぼ一面にコスモスが植えられていました。かなり広い面積だったので、思わず車を止めて見入ってしまいました。普段は大阪に住んでいるので、子どもたちもここまでの規模のコスモスを見たことがなかったので、とてもいい経験になったと思います。

でも本来はお米をつくるはずの田んぼに、なぜコスモスが植えられているのでしょうか。

実はこれには理由があります。

後継者不足などで機能していない水田は、放っておくと雑草が生え、害虫がつき、すぐに荒れてしまいます。景観も悪くなり、休耕田はいいことがありません。また荒れてしまった水田は、当時と同じように稲作や農作物が穫れるようになるまでには大変な労力がかかるようです。

そこで登場するのが、このコスモスです。

栽培した植物を収穫せず、土壌とともに耕すことで後に栽培する作物の肥料にする手法を「緑肥」というのですが、まさにコスモスも緑肥の一つです。コスモスは管理にそこまで手間がかからず、田んぼが荒れるのを防いでくれ、土を肥やす効果もあります。また何より景観が良くなるのもいいですね。既に緑肥を観光資源として利用しているところもあるようです。

野井倉開田コスモスロード
野井倉南部保全協議会の農家の皆さんが収穫後の水田に種を蒔き育てました。約8ヘクタール、距離2kmにわたって道路脇を彩るコスモスがとても綺麗です。開花の時期にはコスモス祭りが開催され、たくさんの人出で賑わいます。
引用元:志布志市観光特産品協会

海外でも同じようなことが行われていて、ヨーロッパでは小麦を栽培する前にクローバーを、アメリカではトウモロコシを栽培する前に大豆を利用するそうです。

また自治体によっては緑肥に対する補助金もでているようで、コスモスによる緑肥は荒れた水田を守り、経済面、管理面での負担を軽減し、観光資源にもなり得る。まさにWin-Winなシステムではないでしょうか。

コスモスを休耕田に植える。

スーパーマリオの生みの親である宮本茂さんが「アイデアというのは、複数の問題をいっぺんに解決することだ」と仰っていましたが、その言葉がとても腑に落ちた事例でした。

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