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ガストロフィジクスによる、 おいしさの錯覚

僕が未熟でありたいと思う感覚のひとつに「味覚」があります。
職業柄、何かにこだわりがある人と話す機会が多いのですが、先日「お米」にこだわりがある人と話をしていた時、「お米にこだわり出してから、外食してもお米が美味しいと感じなくなった、ただ本当に美味しいお米を食べた時は、前よりも味が深くなった。」と仰っていました。とても面白いなと思いました。

元々、僕はそこまで食に強いこだわりがあるわけではないので、「何を食べるか」よりも「誰と食べるか」を気にする方で、気の合う人と食べるのであれば、インスタントラーメンでも最高に美味しいなと思います。

最近では食の分野でも「体験」が注目されるようになってきたようです。

スイスのとある人気レストランでは、これは絶対に美味しいだろうという食を提供しているのにも関わらず、どうも一部のお客さんからは評価をしてもらえていなかったようです。なぜかと観察してみたところ、そのお客さんたちはよそよそしい感じで、無口で食事をしていました。

そこで思いついたのが、各テーブルに牛の置物を置くことでした。

お客さんがテーブルについてもあえてすぐに食事を提供せず、牛の置物に注目させる。これはスイス式の塩か胡椒かといった感じで牛の置物を手に取ると、牛の置物は「モー」と低い鳴き声をあげる。お客さんは一瞬驚いて動揺するが、すぐに笑い出す。そのうち、レストラン内は「モー、モー」という牛の鳴き声で満たされ、自然と笑顔で満たされる。お客さんの気分がよくなったところで、コース料理の1品目がでてくる、という算段です。

ガストロフィジクスとは、人が食べものや飲みものを味わうときに、五感に作用する要素を研究する学問のこと。簡単に言えば「人はなぜ美味しいと感じるか」でしょうか。ガストロフィジクスは、ガストロノミー(美食)とサイコフィジクス(精神物理学)を組み合わせた造語とのことです。

味覚は往々にして、まわりの雰囲気や環境の影響を受けます。いくら美味しい料理でも、トイレで食べると美味しく感じないですね。いくら美味しい料理でも、気の合わない人と食べるのはしんどいですね。料理名や器やカトラリーの形・質感なども同じです。どこで聞いたか忘れてしまいましたが「器8割・味2割」という言葉を今でもよく思い出します。このガストロフィジクスの理念に近い感じがします。

今回の事例でいえば、牛の置物を置いただけで、おいしさを感じさせることができるようになった。まさにデザインの好例だと思いました。

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